デザイナーメッセージ
~Botanical ango~
Botanical angoは日本の家紋を元にしたオリジナルデザインをつくっています。
日本の家紋のデザインは魅力的でそしてとてもユニークであることを皆さんに知ってほしいのです。
家紋は平安時代11世紀頃に貴族の間で始まり江戸時代の後期には庶民にも広がっていった日本の紋章文化です。貴族や武士など特権的な階級だけでなく、寺や神社、庶民もそれぞれの家紋を持つことを禁じられていませんでした。そのため家紋のデザインのバリエーションはどんどん増え、その数は5000を超えると言われています。
家紋のモチーフとなるものはユニークで、植物から自然現象、動物、身につけるもの、器具など多岐にわたっています。一見するとなぜそんなモチーフが使われているのか意味が分からないものもありますが、そこには隠れた本質があるのです。その本質を探ると日本の文化や歴史、自然観、価値観が大いに反映されているのが分かり面白さを感じます。
東京という大都市に生まれ近代的な家庭で育った私は家紋とはあまり縁がなく暮らしてきました。しかし自分たちの生活を見回してみると、意外と家紋は身近に日本のあちこちでいきているのに気が付いたのです。そしてこのユニークな紋章文化とそのデザインをもっとあらたな世界に旅立たせてみたいと考えました。それがボタニカルアンゴの始まりです。
新しい命を吹き込まれたボタニカルアンゴの家紋をあなたの持ち物の一員として身近に置いて使って頂けたら、こんなに嬉しいことはありません。
MOMOKO TAKATA
亀甲三ツ割葉菊
(きっこうみつわりはぎく)
“強さと自由と美しさ”
亀甲はその字のごとく亀の甲羅を表した正六角形ですが、この亀甲の正六角形は自然界ではハニカム構造と呼ばれるもので比類なく安定した黄金構造なのです。亀が長寿動物と呼ばれるようになったのはその安定構造が背景にあるからかもしれませんが、甲羅の頑丈さからも強さを合わせ持つ縁起の良い文様として古代から使われてきました。
亀甲の中にある菊花もまた吉祥文様(きっしょうもんよう)です。菊の咲き姿は品が良く高潔だと評され、宮家や公家の紋として使われてきました。菊の家紋はとても種類が多いのですがこれは徳川家の葵の紋とは対照的に菊花のデザインを使うことを誰も制限されなかったことで広まったもので、一般庶民の家紋、和菓子、仏具など多種多様なデザインを生み今に至っています。
また日本では平安時代から陰暦9月を菊月と呼び、「長陽の節句(菊の節句)」として菊花酒(きっかしゅ)を飲み邪気を払い長命を祈りました。強さと美しさと制限のない自由さを象徴したパワフルな紋様です。
三つ葉菫
(みつばすみれ)
"ひっそりと優しく癒す”
可憐という言葉がぴったり似合う菫は世界でも愛好家の多い植物。数百もある菫の種類のうち多くは日本にあって、実は日本は菫王国と言われているのです。
万葉の頃から歌に詠われ親しまれてきた菫ですが、勝負や戦いにちなむいわれが少なかったからか家紋として武士に注目されることは少なく、その姿同様にひっそりと存在するモチーフでした。しかし欧米では古代ギリシャの頃より頭痛や鬱、眼病を治す薬用植物として重宝されてきた歴史があり、キリスト教では聖母マリアと関連付けられ愛されてきました。ナポレオンやビクトリア女王など歴史上の人物で菫を愛好してきた人物は多いのです。
菫の育つ場所は野原や山里など人の生活に近いところが生育圏、人とつかず離れずの距離で長く愛され尊ばれてきました。そんな優しい存在感を表現したくてこのデザインをつくりました。“春の野に すみれ摘みにと 来し我ぞ 野をなつかしみ 一夜寝にける” 万葉集より
羽根団扇と竜胆と鳥
(はねうちわとりんどうととり)
“愛するものに寄り添い守る”
このデザインの中で使われている竜胆(りんどう)は日本原産の花で、その根に薬効があることから漢方植物として使われてきました。
竜の胆ほど苦いというのが語源です。また薬用としてだけでなく、すでに平安時代には観賞用としても育てられており、枕草子や源氏物語にも数多く登場する日本人とは切っても切れない馴染みの深い秋の花です。
竜胆の花言葉は「誠実」「あなたの悲しみを愛する」というもので、愛する人の悲しみに寄り添おうとする深い共感が表されています。一方、羽根の団扇(うちわ)ですが団扇は歴史の古い道具で古代エジプトや中国、弥生時代の古墳からも出土されています。その頃の団扇は暑さをしのぐというよりも羽根で風を起こすことで厄災をふせぎ邪気を祓うという役割がありました。そんなふたつのものにもう一つの寄り添うものとして鳥を配し、愛する者に寄り添い邪気をはらう「守る」デザインとして考えたのがこの羽根竜胆です。